いのちの森の台所から

「私はたいした働きはできないのですが、働くことが大好きです。(略)阿井寛次郎さんの『仕事が仕事をしている仕事』の一節を連想したのです。
―仕事の一番すきなのは、苦しむ事がすきなのだ―
(略)生きていれば、喜びだけではなく、どうしようもなくつらく、せつない思いをすることもあります。そんなとき、苦しみを乗り越えるために、あえてもっと厳しい仕事を選ぶ。苦しんで、苦しんで、自分の力ではどうにもならなくなったら、あとはすべて神さまにおまかせに。そのようにしてささやかな活動を続けてまいりました」

仕事をしているとストレスがたまることがある。自分と違う価値観、行動をとる他人。相手の話を聴きながら、この人は何が言いたいのか、を探りながら自分のものさしが正しいとは考えず、一期一会の気持ちで対面していけば、ストレスも軽くなるかも。

「その場で注意しても、その人は受け入れることができないと思います。ですから、そういうときは、自分の感情を受けとめるしかないんですね。あまり複雑に考えないで、感情をそのまま受けとることにしています。感じることは正直に感じたほうがいいと思うんですよ。(略)ただし、相手やまわりの人にその感情をぶつけたりすることはしたくないので、自分の中でとことん苦しむことにしております。腹を立てている自分を見つめることもせず、相手に原因を探しても、なんの解決にもなりません。好きなことをして、そこから抜け出す努力もします。料理とか、裁縫とか、手を使うことをしていると、そこに集中して、だんだん気持ちがおさまってきます」

「感情は抑えることできないものだから、そのまま感じればいいんですよ。でも、その感情を相手にぶつけたり、ましてやお子さんに八つ当たりしてはいけんませんね。”じぶんがこう言ったからだめなんだろうか”とか、”あの人もよくないのに私のことを悪くとっている”などと考え出すと、非常に複雑になってしまうので、余計なことは考えないことです。私はふだんやれないようないちばん面倒なことをやるんですよ。そうするとこころがいつのまにかそっちへ向いて、少しずつ感情をコントロールできるようになります」

年金問題など社会保障や福祉の手薄な日本で老いていくことが不安です。貯蓄も十分ではなく、家族も親しい友人もいません。死後、何日も経ってから発見される一人暮らしの方のニュースなど、他人事とは思えません。

「そう考えると不安ばかりですよ。看病する人もいないしとか、ひとりだけとかって思えば、どんどん不安がふくらんでくる。私はそのときが来れば考えるかも知れないけど今は考えません。”今を生きる”という言葉に尽きると思う。たとえば貯金があればいいのにと思ったって、貯まらないからね。だからもう私は、今が一番だと思っています。なんにもしないでいるとそういうことを考えると思います。なにかしら始めたほうがいいですよ。自分のためではなく、人さまのために。すると、自分の中からなにかがどんどん出てくるから、それに向って真実に生きていけば、不安はなくなると思います。明日のことは私たちにはわからない。ですから、今このようにしているとなんにもないし心配ないから、これで満足していくことです。どこも痛くないのに、ここは癌ではないかとか、糖尿病ではないかとか、いつも自分を大事に大事にして心配ばかりしていると、逆に病気を誘導していくことにもなると思います」