心に迫るパウロの言葉

いずれにせよ、ごく普通の人間は、パウロの言うように、苦しみの中からしか、ほんとうの自分を発見しない。はっきり言えば、幸福である間はだめなのである。幸福である限り、人間は思い上がり、自信を持ち続け、そのような自信や幸福がいつくずれるか、と思ってはらはらしている。いや、はらはらする人はまだいい。たいていの人が、自分は「幸福にふさわしい人間」だとさえ思っているのである。この幸福は努力によって手にいれたもので、自分の心がけが悪くない限り、まず運が狂うことはない、と思う。
その点、パウロは甘くない。パウロのものの言い方は経験によっている。世の中は決して正当に報いいれたりしてはいないこと、火傷をしなければ普通人間は分からないものだから、私たちは火傷の後に、人生の本当の意味を理解して、強い人間になる、ということである。

心に迫るパウロの言葉 (新潮文庫)

心に迫るパウロの言葉 (新潮文庫)

また火傷して「駄目人間」のレッテルを貼られた。立ち上がって再び社会に出て行く気力はない。何故傷つかなければならないのだろう?何故毎日が穏やかで苦しみのない生活を送れないのか、もう傷つきたくない、と思う。

しかし、私は若い頃の自分より、今の自分の方が好きだろうか?
YES.若い頃のような思い上がった希望も根拠のない自信もないが、アンチエイジングもしたいと思わない。失敗して、傷ついても他人の痛みが分かるようになった今の自分の方が好きだ。

だったら、失敗者の人生を歩んでいても、私は成長した、若い頃の自分よりも分別がある。曽野綾子が書くように、幸福よりも苦難から人間が学ぶことは多い。勿論、苦難に負けて性格が歪む人も多いが。